「もう〇年生なんだから、少しはお金の使い方を考えてほしいんだけどな」──
夕方、子どもたちのお迎えに向かう車の中、信号待ちでふとそんなことを考えたことはありませんか。
前日にゲームの課金をせがまれたばかりだったり、スーパーのレジ前で「これ買って」と泣かれた記憶がまだ新しかったり。
理由はさまざまですが、多くの親御さんが一度は「この子は将来、ちゃんとお金を管理できる大人になるのだろうか」という漠然とした不安を抱えているのではないでしょうか。
その不安の正体は、実は「お小遣いの金額」ではなく「家庭でのお金の会話の質」にあります。
「浪費癖」は金額の問題ではなく、会話の”空気”の問題
子どもの将来の金銭感覚というと、つい「お小遣いをいくら渡すか」「何歳から渡すか」といった金額やタイミングの話に意識が向きがちです。
もちろんそれも大切な要素ですが、本質はもっと手前にあります。
それは、お金の話を家庭の中で「日常会話」として扱っているかどうか、という点です。
前回の記事「子どもの自制心を育てる金銭教育の工夫」でも触れましたが、金銭感覚の土台は思っている以上に早い時期にできあがります。
イギリス・ケンブリッジ大学のデイビッド・ホワイトブレッド教授らが2013年にまとめた研究では、計画性や自制心、先の楽しみのために今を我慢する力といった、後の金銭感覚を左右する認知的な土台の多くが、7歳頃までにほぼ形成されているという結果が報告されています。
お金を実際に稼いだり使ったりする経験そのものより先に、「お金についてどんな空気の中で育つか」が、将来の浪費傾向にじわじわ影響しているのです。
| 子ども時代の環境 | 大人になってからの傾向 |
|---|---|
| お金の話が家庭のタブーだった | お金の管理を「考えたくないもの」として先送りしやすい |
| 欲しい物を待たされた経験がほぼない | 衝動買い・即決の買い物に頼りやすい |
| お金の使い道を自分で選んだ経験がある | 衝動より計画を優先しやすいという傾向が報告されている |
出典:Whitebread, D. & Bingham, S.(2013)”Habit Formation and Learning in Young Children”(Money and Pensions Service)
大人になってからの浪費癖につながる3つの原因
1つ目は、「お金の話はタブー」という空気が家庭にあることです。
「お金のことは子どもが気にしなくていい」という配慮は優しさである一方、子どもにとっては「お金は隠すもの・触れてはいけないもの」という無言のメッセージにもなります。
学校でもお金についてじっくり学ぶ機会は多くありません。学校でお金を教えない理由でも触れましたが、だからこそ家庭での何気ない会話が、子どもにとって唯一のお金の教科書になっているのです。
2つ目は、失敗する前に親が先回りしてしまうことです。
お小遣いを使い切って困っている姿を見るのがつらくて、つい追加で渡してしまう。これは自然な親心ですが、「予算内でやりくりする」「欲しい物を我慢して待つ」という経験を奪ってしまうことにもなります。
小さな失敗を家庭という安全な場所で経験できないまま大人になると、初めての失敗が高額なクレジットカードの請求書だった、ということにもなりかねません。
3つ目は、感情とお金の使い方が結びついていることに、誰も気づかせてくれないことです。
疲れた日のご褒美消費、寂しさを埋めるための買い物──大人でも心当たりがある方は多いはずです。
子どもの頃から「イライラしたから買う」「頑張ったからご褒美」というパターンだけで育つと、感情の処理方法として「買う」以外の選択肢を知らないまま大人になってしまいます。
ある調査機関が2024年に実施した「親子金融リテラシー調査」では、自分自身に金融リテラシーがあると感じている親は25.4%にとどまり、あまりないと感じている親(36.4%)を下回るという結果が出ています。
親自身が自信を持てないテーマだからこそ、家庭で話題にすること自体を無意識に避けてしまいやすいのです。
出典:アセットマネジメントOne「親子金融リテラシー調査」(未来をはぐくむ研究所)
家庭でできる、浪費癖を防ぐお金の会話4ステップ
①欲しい物が出たら、その場で即決せず「一晩考える」を合言葉にする
⬇
②お小遣い帳やメモで、使ったお金を親子で一緒に振り返る
⬇
③「なぜそれを選んだのか」を否定せずに聞いてみる
⬇
④小さな失敗は口を出さず、次にどうするかだけを一緒に考える
我が家でも、3人の子どもたちには小学生の頃からお小遣いを自分で管理させてきました。
使い切って「もう買えない」と悔しがる姿を見るのは正直つらかったのですが、そこで先回りして渡さなかったことが、今では「本当に欲しい物かどうか一晩考える」習慣につながっています。
親が我慢して手を出さない時間こそが、子どもにとって一番の学びになるのだと実感しています。
今日からできる具体的なアクション
まずは今日、子どもが「これ欲しい」と言った瞬間に、頭ごなしに否定も即決もせず「いいね、一晩考えてみようか」と返してみてください。
それだけで、衝動買いではなく「選ぶ」経験に変わります。
また週末には、財布やお小遣い帳を一緒に開いて「今週何に使った?」と振り返る5分間を作るのもおすすめです。
我が家では、子どもたちがメルカリでの売買体験を通じてお金の流れを学ぶ「家庭内起業ごっこ」も実践していますが、こうした小さな実践の積み重ねが、将来の金銭感覚を静かに育てていきます。
まとめ
子どもの浪費癖を心配する気持ちの根っこには、「ちゃんと育てられているだろうか」という親自身の不安があります。
でも大切なのは完璧な金銭教育ではなく、お金の話をタブーにせず、失敗も含めて日常の会話として扱い続けることです。
今日の「一晩考えてみようか」のひと言が、10年後の子どものお財布を守るかもしれません。
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