「そんなこと、今は聞かなくていいの」
——夕食の支度をしながら、「うちって貯金いくらあるの?」と聞いてきた子どもに、思わずそう返してしまったことはありませんか。
悪気はなく、ただその場をやり過ごしたかっただけ。
でも数日後、学校での小さなトラブルを子どもがなかなか話してくれなかったとき、私はふと思ったのです。
もしかして、あの「今は聞かなくていい」の積み重ねが、子どもの「言っても仕方ない」という感覚を育ててしまっていたのでは、と。
お金の話を避け続けることは、実は「本音を話さなくていい家庭」というメッセージを、じわじわと子どもに伝えてしまいます。
「お金がタブー」は「本音がタブー」のサイン
お金の話を避ける家庭の本当の問題は、お金そのものではありません。
「話しにくいことは話さない」という家庭内のルールが、お金以外の悩みにも広がってしまうことです。
友達関係のトラブル、進路の不安、いじめのサイン——子どもが本当に助けを求めたい場面で、「うちでは深刻な話はしない」という空気が、口を閉ざす理由になってしまいます。
子育ての秘訣と金銭教育の関係については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
会話が生まれない3つの理由
1. 親自身がお金の話に苦手意識を持っている
「お金の話は下品」「人前でする話じゃない」——多くの親自身が、そう教えられて育ってきました。
学校でもお金についてほとんど教わらないまま大人になるため、悪意はなく、ただ受け継がれてきた価値観であることがほとんどです。
2. 「心配をかけたくない」があらゆる本音をブロックする
家計の心配も、仕事の悩みも、子どもに知られたくない。その気持ちは自然ですが、行き過ぎると「大事な話は子どもにしない」という習慣そのものが家庭に定着してしまいます。
3. 会話の「機会」自体が家庭にない
レジ前で「これ買って」と言われて焦って断る、その場限りのやり取りで終わっていませんか。
腰を据えてお金について話す時間が、そもそも家庭になければ、会話の糸口はいつまでも生まれません。
信頼関係を育てるお金の会話術
大切なのは「正しい答え」を教えることではなく、「話しても大丈夫」という安心感を積み重ねることです。
まずは、タブー家庭とオープン家庭で、同じ場面がどう変わるかを見てみましょう。
| 場面 | タブー家庭 | オープン家庭 |
|---|---|---|
| 「うちってお金持ち?」 | 「そんなこと聞くもんじゃない」 | 「なんでそう思ったの?」と聞き返す |
| レジ前のおねだり | 有無を言わさず却下 | 理由を一緒に考える |
| 家計の失敗談 | 隠す・見せない | 「実はこないだ〇〇失敗しちゃって」と共有 |
①週に1回、5分だけ「お金トーク」の時間を作る
⬇
②まず親が自分の失敗談を話す
⬇
③子どもの意見を否定せず最後まで聞く
⬇
④お金以外の話題にも同じ態度で向き合う
実際に、こども家庭庁の調査では、家族との関わりについて「何でも悩みを相談できる人がいる」と答えた10〜14歳の子どもは86.6%、「こまったときは助けてくれる」と答えた子どもは95.7%にのぼりました。
お金の話に限らず、家庭が「安心して本音を言える場所」になっているかどうかが、子どもの相談行動を左右しています。
出典:こども家庭庁「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」10歳~14歳対象調査結果(こども家庭庁)
金融広報中央委員会(現:J-FLEC)が実施してきた「子どものくらしとお金に関する調査」でも、家庭内での会話の内容や頻度が継続的な調査項目とされてきました。
お金についてオープンに話せる家庭ほど、他の悩みも打ち明けやすい傾向があると考えられます。
出典:金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」(知るぽると)
今日からできる小さな一歩
我が家では、3人の子どもたちとメルカリで不用品を売ったお金の使い道を一緒に相談したり、M-1グランプリ挑戦の遠征費用を「家族会議」で話し合ったりしてきました。
最初は「お金の話、面倒くさそう」という顔をしていた子どもたちも、今では自分から「これ、お小遣いで買っていい?」と相談してくれるようになりました。
今日からできることとして、次の3つを試してみてください。
- 夕食時に「今日いくら使った?」ではなく「今日一番よかった買い物は?」と聞いてみる
- 家計の失敗談を、子どもの前で笑い話として話してみる
- 子どもがお金の質問をしてきたら、はぐらかさずに「いい質問だね」と受け止める
まとめ
お金の話をタブーにしないことは、家計管理のテクニックではなく、親子の信頼関係そのものを育てる土台です。
今日からの小さな会話の積み重ねが、子どもが将来、本当に困ったときに「相談していいんだ」と思える安心感につながります。
金融教育シリーズの前回、きょうだい間で金融教育への反応が違う理由もあわせてご覧ください。
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