帰り道の車の中で「将来なにになりたい?」と聞いたら、「わかんない」「別に……」と素っ気なく返ってきて、なんとなく寂しい気持ちになったことはありませんか。
塾や習い事の送迎中、レジ前で「これ欲しい」とねだられたとき、寝かしつけの後にふと将来のことを考えたとき——子どもの「挑戦する気持ち」がどう育っていくのか、気になっている方は多いと思います。
「うちの子、自分の力で道を選んでいけるのかな」という不安は、決して大げさな心配ではありません。
「挑戦する気持ちがない」は性格の問題ではありません
子どもが将来に対してどこか受け身だったり、新しいことに尻込みしたりするのは、性格ややる気の問題ではないことがほとんどです。
本当の原因は、「自分で決めて、失敗して、またやり直す」という経験の絶対量が、日常の中で圧倒的に足りていないことにあります。
実は今、子どもたち自身の「将来は自分で事業をやってみたい」という気持ちは、想像以上に高まっています。
株式会社ペンマークが高校生約13万人を対象に行った調査では、高校生の起業志望率は約14%で、同社が行った大学生調査の約12.4%を上回ったという結果が報告されています。子ども世代の関心はすでに芽生えているからこそ、家庭でその芽をどう育てるかが分かれ道になります。
学校ではなかなか教えてもらえないお金の話と同じように、「挑戦する力」も学校任せにはできない部分が大きいテーマです。
子どもが挑戦を避けるようになる3つの原因
原因1:失敗を先回りして防いでしまう
親心として、子どもが損をしたり恥をかいたりする前に、つい手を出してしまいます。結果として子どもは「挑戦しなければ失敗もしない」という安全策を学習してしまいます。
原因2:「稼ぐ」体験がごっこ遊びやゲームの中だけで完結している
お金を稼ぐ・値段をつける・お客さんとやりとりするといった体験が、リアルな手触りのないまま終わってしまうことが多いのです。
原因3:家庭内でお金や失敗の話がなんとなくタブー化している
「子どもの前でお金や失敗の話をするのは良くない」という思い込みが、実は挑戦する力の芽を摘んでいます。
お金の話をタブーにしない家庭ほど、他の悩みも相談しやすいという話は、前回の記事「子どもとお金の話を避けると危険?親子の信頼を育てる会話術」でも取り上げました。今回のテーマは、そこからさらに一歩進んだ「挑戦する力・キャリアへの影響」です。
「起業ごっこ」で挑戦する力を育てる
子どもに必要なのは特別な才能ではなく、「小さく挑戦して、小さく失敗できる場」を家庭の中に用意することです。
ここで参考になるのが、スウェーデンの養子データを使った経済学の研究です。
Lindquist・Sol・van Praag(2015年、Journal of Labor Economics)の研究によると、親が起業家であることは子ども自身が起業家になる確率を約60%高めることが分かっています。
しかも興味深いのは、育ての親の影響が生みの親(血縁)の影響のおよそ2倍にもなっていた点です。
つまり「才能を受け継ぐ」よりも、「身近な大人が挑戦する姿を見て育つ」という環境の力の方が大きいということです。
これは、実際に会社を経営していなくても、家庭の中で「起業ごっこ」を演出すればいいというヒントになります。
我が家でも、子どもたちと一緒に不要品を家庭内起業ごっこのような形でメルカリに出品し、値付けや写真撮影、購入者とのやりとりを一緒に体験してきました。
売れたときの「自分で稼いだ」という顔は、親が何を言うより雄弁でした。
| 年齢の目安 | 挑戦体験の例 | ねらい |
|---|---|---|
| 5〜6歳 | お小遣いで自分の好きな物を自分で選んで買う | 「自分で決める」感覚をつかむ |
| 7〜9歳 | 家の不要品を親と一緒にメルカリに出品してみる | 値付け・やりとりのリアルさを知る |
| 10〜12歳 | 「家族会社ごっこ」で社長・経理・営業などの役割を決めて企画する | 役割分担と挑戦の面白さを知る |
| 中学生以降 | 小さな元手でフリマ出品やハンドメイド販売に挑戦する | 失敗してもやり直せる感覚を持つ |
出典:Lindquist, Sol & van Praag(2015)”Why Do Entrepreneurial Parents Have Entrepreneurial Children?”(IZA Discussion Paper No.6740)
①不要品を1つ選んで、子どもと一緒に「いくらで売れるか」を予想する
⬇
②実際に出品・販売し、結果を一緒に振り返る
⬇
③売上の使い道(貯める・使う・また元手にする)を子どもに決めさせる
我が家の子どもたちは、メルカリでの販売体験だけでなく、M-1グランプリの1回戦に挑戦するという「結果が出るかわからない挑戦」も経験しました。
失敗しても命まで取られるわけではない、という感覚を早いうちに持てたことは、その後の「やってみな、わからん」という前向きさにつながったと感じています。
今日からできる具体アクション
特別な準備はいりません。
今日の生活の中に「小さな挑戦」を1つ差し込むだけで十分です。
今日からできることとして、次の3つをおすすめします。1つ目は、捨てようと思っていたおもちゃや服を1つ選び、子どもと一緒に「売るならいくら?」と値段を予想してみることです。
2つ目は、レジ前や買い物の場面で「これとこれ、どっちにする?」と、小さな決定権を子どもに渡してみることです。スーパーでの買い物は、実は挑戦と決断の練習にぴったりの場面です。
3つ目は、子どもが何かに失敗したときに「失敗しても大丈夫、次はどうする?」という言葉を実際に口に出してかけてみることです。
まとめ
子どもの挑戦する力やキャリアへの向き合い方は、生まれ持った才能ではなく、家庭の中でどれだけ「小さな挑戦と小さな失敗」を積み重ねられるかで大きく変わっていきます。
特別な起業体験でなくても、家庭内の「起業ごっこ」やメルカリ体験のような小さな一歩が、将来子どもが自分の道を選ぶ力につながります。
我が家自身も、最初は小さな出品作業や家族会社ごっこから始めました。
今日ご紹介した3ステップの表を参考に、まずは1つだけ、家庭の中で挑戦の場をつくってみてください。
お金の話や挑戦の話をタブーにしない家庭づくりについては子育ての秘訣と金銭教育についての記事も参考にしてください。
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